RAPSTAR ARCHIVE — SEASON 2
ラップスタア誕生
2018
毎週追いかけるレギュラー配信と「24時間で1曲」の合宿が生まれた、フォーマット発明の回。
王者
LEON a.k.a. 獅子(現 Leon Fanourakis)
Rep
横浜
決勝
2018年6月27日(最終回)
“観る”オーディションへ。
大会の流れ — 応募から決勝まで
応募
2月17日締切。指定トラックに自己紹介リリックを乗せた動画で応募する型はシーズン1を踏襲した。
一次・二次審査
動画審査と、番組スタッフが本人の地元を訪ねるロングバージョン審査。3月から毎週、選考の過程そのものが配信された。
ラップスタアキャンプ(新設)
ファイナル進出を懸けた2泊3日の合宿。「24時間以内に楽曲を制作しレコーディングする」課題が初めて課された。現行の「RAPSTAR CAMP」まで続くフォーマットの起点だ。
ファイナル
5名で争われた決勝は6月27日の最終回で決着。横浜のLEON a.k.a. 獅子が優勝した。
記録 — 何が起きたか
2018年2月から6月まで全21話、番組初のレギュラー配信となったシーズン2。特番形式だったシーズン1と違い、毎週水曜深夜に選考の過程そのものを追いかけられる形式になった。MCは斎藤司(トレンディエンジェル)に交代し、審査員はKダブシャイン、ANARCHY、SEEDA、HUNGER、伊藤雄介の5人が続投。そしてこの回、後の番組の背骨になる発明が生まれる——ファイナル進出を懸けた2泊3日の合宿「ラップスタアキャンプ」、課題は「24時間以内に楽曲制作・レコーディング」だ。
優勝したのは横浜のLEON a.k.a. 獅子——のちのLeon Fanourakis。2015年の第8回高校生ラップ選手権を制した実績を引っ提げての出場で、硬質なフロウと手数で5人のファイナル(2位MC小法師、3位Natural P、マイドリ、LIT0)を制した。優勝から4ヶ月後の10月、ANARCHYのレーベル1% ONEPERCENTへの加入と同時に「Leon Fanourakis」へ改名し、優勝後シングル「I'm Ready / Right Now」(prod. ESTRA / DJ MITSU THE BEATS)を発表した。
- 放送
- 2018年2月7日〜6月27日、毎週水曜深夜にABEMAで放送(全21話・初のレギュラー配信)
- Judges
- Kダブシャイン(審査員長)、ANARCHY、SEEDA、HUNGER、伊藤雄介
- Finalists
- LEON a.k.a. 獅子、MC小法師、Natural P、マイドリ(現mindboi)、LIT0(現NextForeign)
- Staff
- MC: 斎藤司(トレンディエンジェル) / アシスタント: 岡本夏美 / オーガナイザー: RYUZO
- Prize
- 活動資金300万円
名場面 — この回を語るなら
「24時間で1曲」の初導入
ラップスタアキャンプの発明は、この番組の審査を「持ち曲の披露」から「作る力の実演」へ変えた。土壇場で曲を仕上げる過程そのものがコンテンツになる——以降すべての大会のクライマックスがここで生まれた。
高校生ラップ選手権の王者が音源で挑む
LEONは高校生ラップ選手権優勝という「バトルの実績持ち」での出場だった。即興の王者が、あえて音源とパフォーマンスの審査に身を晒して勝つ——バトルブームへのカウンターとして生まれたこの番組にとって、これ以上ない証明になった。
ANARCHYが見出し、レーベルへ
審査の場でLEONを高く買ったANARCHYは、優勝後に自身のレーベル1% ONEPERCENTへ迎え入れた。審査員と出場者の関係が番組の外のキャリアへ直結した最初の例で、「この番組はシーンへの入口だ」という信頼の原型になった。
この回から生まれた楽曲
I'm Ready / Right Now — LEON a.k.a. 獅子
優勝後の2018年10月、1% ONEPERCENTからリリースされた両A面シングル。prod. ESTRA / DJ MITSU THE BEATS。
批評 — シーンに何を残したか
シーズン2の本質的な発明は、優勝者ではなくフォーマットにある。ひとつはレギュラー配信化。視聴者は「結果」ではなく「過程」を消費するようになり、応募者はキャラクターに、視聴者は当事者に変わった。もうひとつは「24時間で1曲」のキャンプ。この2つは現在の応募6,000人超の大会でもそのまま背骨であり続けている。番組の9年間で最も長持ちしている発明は、どちらもこの記録の薄い回で生まれた。
優勝したLEONの経歴は、番組の存在意義そのものへの回答だった。高校生ラップ選手権の王者——つまりバトルブームの申し子が、即興ではなく音源と楽曲制作の審査に自分を晒し直し、そこで勝った。「バトルの強さと楽曲の強さは別のスキルだ」というこの番組の出発点の主張を、両方を持つ人間が身をもって証明した形だ。のちにLeon Fanourakisとして国内外のステージへ展開していくキャリアは、この審査眼の正しさの証明でもある。
ただし、この回を語るとき正直に言うべきことがある——シーズン2は歴代で最も語られない回だ。優勝者の改名、初期の配信アーカイブへのアクセスのしにくさ、当時の報道の少なさ。応募数の公式記録すら現存が確認できず、決勝の詳報記事も残っていない。記録が散逸すれば、シーンの記憶からも消えていく。私たちがこのアーカイブを作っている理由は、まさにここにある。文化は、誰かが記録しなければ存在しなかったことになるのだ。
※「批評」はBARS.編集部の見解です。
その後 — 系譜はつづく
Leon Fanourakisは『CHIMAIRA』(2019)からブルックリンのAKTHESAVIORと組んだ『FLATBU$H ¥EN』、『SHISHIMAI』(2021)、『MUSA』(2022)へと、「日本語ラップを世界へ」を掲げるキャリアを積み上げた。2025年からはフリーとなり、2026年にはPxrge Trxxxperのアルバムに客演——8シーズン後の王者と、2代目の王者が同じ曲で繋がっている。
そしてキャンプの発明は、後年「Crayon」(2021)や「GENZAI」(2023)といった大会発のヒット曲を生む土壌になった。24時間の密室から名曲が生まれる回路は、すべてここから始まった。
RAPSTAR 2018 王者
Leon Fanourakis
アーティストページで全曲を見る →
出場者名鑑 — あの回に出てた人は、いま
MC小法師
2位
決勝でLEONに次ぐ評価を受けた。大会後も自身のペースで活動を続けている。
Natural P
3位
決勝まで残った一人。大会後の動向は多く報じられていない。
マイドリ(現 mindboi)
ファイナリスト
改名して活動を継続。シーズン2組の「その後」は、記録の少なさも含めてこの回の課題を映している。
LIT0(現 NextForeign)
ファイナリスト
こちらも改名して活動継続。ファイナリスト5人中3人が名義を変えた回は歴代でもこの回だけだ。