RAPSTAR ARCHIVE — SEASON 3
ラップスタア誕生
2018-19
シーンの地図に載っていなかった街から、王者が出た。「ヤングトウカイテイオー」誕生の回。
王者
¥ellow Bucks
Rep
岐阜・高山
応募
300名超(当時最多)
決勝
2019年1月17日(放送は1月30日・3時間拡大枠)
会場
恵比寿 LIQUIDROOM(有観客開催)
フッドを背負う、ということ。
大会の流れ — 応募から決勝まで
応募・動画審査
応募は300名超で当時最多。指定トラックに「自らのLIFEを投影した自己紹介リリック」を乗せる形式は初代から続く型だ。
一次・二次審査
動画審査の通過者を段階的に絞り込み、番組側が出場者の楽曲をブラッシュアップしながら次のステージへ送り出していく。
ラップスタアCAMP
合宿形式で、24時間以内の楽曲制作・レコーディング審査。同じトラックを使った直接対決でファイナル進出者を決めた。
敗者復活
敗者復活枠からはJuaが復帰。Juaは決勝で3位まで食い込み、「復活組は侮れない」という後年まで続く伏線を最初に張った。
FINAL
2019年1月17日、恵比寿LIQUIDROOM。番組として初めて、観客を入れたライブハウスでの決勝だった。
記録 — 何が起きたか
2018年10月から2019年1月にかけて全16回を放送したシーズン3。応募は300名を超えて当時最多を更新し、決勝は2019年1月17日、恵比寿LIQUIDROOMで初めて観客を入れて開催された(放送は1月30日、23時からの3時間拡大枠)。審査員はKダブシャイン、ANARCHY、SEEDA、HUNGER、伊藤雄介というシーズン1からの5人体制が続いた。
優勝したのは岐阜・高山をレペゼンする¥ellow Bucks。決勝ではGradis Niceのビートによる「The Young Tokai King(ヤングトウカイテイオー)」とZOT on the WAVEによる「Trust In Bucks」の2曲を叩きつけ、「HIPHOPに恩返しがしたい」と故郷への愛を語り、優勝の瞬間には「ラップスタア最高!人生最高!」と叫んだ。ANARCHYは「故郷への愛とか、これぞHIPHOPっていう良いライブを見させていただきました」と評している。この決勝2曲は後にEP『Rapstar Pack』として配信された——公式の説明文いわく、「伝説の決勝戦でカマした2曲。ヤングトウカイテイオーの誕生」。
- 放送
- 2018年10月10日〜2019年1月30日、毎週水曜23:30にABEMAで放送(全16回)
- Judges
- Kダブシャイン(審査員長)、ANARCHY、SEEDA、HUNGER、伊藤雄介
- Finalists
- ¥ellow Bucks、Joseph Blackwell、Jua(敗者復活)、Flight-A、SANTAWORLDVIEW
- Staff
- MC: 斎藤司(トレンディエンジェル)、バッドナイス常田 / オーガナイザー: RYUZO
- Prize
- 活動資金300万円
名場面 — この回を語るなら
「ヤングトウカイテイオー」誕生の夜
決勝のLIQUIDROOMで初披露された「The Young Tokai King」は、東海地方を背負う若き王を名馬トウカイテイオーに重ねたセルフボースト。この一曲がそのまま彼の代名詞になり、大会の決勝曲が出世曲になる最初の例を作った。
20歳のビッグマウス、SANTAWORLDVIEW
当時20歳のSANTAWORLDVIEWは強気な発言で番組を沸かせ、決勝では会場との一体感を評価された。優勝は逃したが、数年後には1% ONEPERCENT契約——シーズン1のTohji、WILYWNKAに続く「落選側のスター」の系譜をこの回で継いだ。
敗者復活のJuaが3位
敗者復活枠から決勝に滑り込んだJuaは、そのまま3位まで食い込んだ。復活組が上位を食う——4年後に優勝までたどり着くこの番組の名物構造の、最初の実例だった。
この回から生まれた楽曲
The Young Tokai King — ¥ellow Bucks
prod. Gradis Nice。決勝で初披露された「ヤングトウカイテイオー」。EP『Rapstar Pack』として音源化された。
Trust In Bucks — ¥ellow Bucks
prod. ZOT on the WAVE。決勝のもう一曲。後の審査員ZOT on the WAVEは、この時点で王者のビートを作っていた。
批評 — シーンに何を残したか
¥ellow Bucksの優勝がシーンに残した最大のものは、「地方のフッドの物語」を全国に流通させる装置としての番組の発見だ。東京のクラブシーンを経由せずに、地元の風景と人間関係をそのままリリックにして頂点へ届く——このルートの実在が証明されたことで、以降の応募者にとって「どこから来たか」は隠すものではなく武器になった。後に茨城から2人の王者(2023年ShowyVICTOR、2025年Pxrge Trxxxper)が生まれたのも、この回が開けた道の延長線上にある。
さらに重要なのは優勝後のキャリア設計だ。¥ellow Bucksは拠点を東京に移すことなく、地元・東海を背負ったまま全国区であり続けるモデルを確立した。「売れたら東京」という日本の音楽産業の暗黙の前提を、実践で否定してみせたのだ。地元にスタジオとコミュニティを持ち、そこから全国に届ける——現在では珍しくなくなったこのスタイルの、最も早い成功例のひとつだと言える。
そして5年後の2024年、彼は審査員席に座り、長崎から来たKohjiyaを王者に選ぶ側に回った。地方から来た王者が、次の地方の才能を引き上げる——この番組の生態系が最も美しく循環した瞬間のひとつだろう。決勝のビートを作ったZOT on the WAVEまでもが後に審査員席に着いたことを思えば、この回の決勝は「未来の番組運営陣」による共同作業だったとさえ言える。
※「批評」はBARS.編集部の見解です。
その後 — 系譜はつづく
¥ellow Bucksはその後も東海を代表するラッパーとして第一線を走り続けた。『Jungle』(2020)から『Jungle 2』(2024)、そして2026年にはFabolousやYGを迎えた『Wataru』を発表し、東京での初ワンマンはアリーナ規模に達している。2024年には審査員として番組に帰還した。
初めて観客を入れた決勝、決勝曲がそのまま出世曲になる回路、敗者復活組の躍進——この回で生まれた型は、どれも後年の大会の骨格になっている。
RAPSTAR 2018-19 王者
¥ellow Bucks
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出場者名鑑 — あの回に出てた人は、いま
Joseph Blackwell
2位
沖縄出身。初代王者DAIAに続く沖縄勢として決勝まで勝ち上がった。
Jua
3位(敗者復活)
敗者復活から3位まで食い込み、「復活組の躍進」というこの番組の名物構造の最初の実例になった。
SANTAWORLDVIEW
ファイナリスト
「Pink juice」のクラブヒット、Leon Fanourakis「BOUNCE」客演を経て、2021年に1% ONEPERCENT契約。落選側から最も大きく羽ばたいた一人。
Flight-A
ファイナリスト
決勝のステージに立った5人の一人。大会後の動向は多く報じられていない。