RAPSTAR ARCHIVE — SEASON 5
ラップスタア誕生
2021
評価する側の世代交代。そして決勝の外側に、歴代で最も豊かな才能が眠っていた回。
王者
eyden
Rep
千葉・袖ケ浦
応募
2,546人(当時過去最多)
決勝
2021年12月25日
会場
川崎 CLUB CITTA'
審査員、総入れ替え。
大会の流れ — 応募から決勝まで
応募・動画審査
応募2,546人は前回の1,416人からほぼ倍増、当時の過去最多。動画審査を通過した31人が次のステージへ。
サイファー審査
31人を6グループに分けたサイファー形式のマイクリレーで10人に絞る。後のスターBonberoやCYBER RUIもこのステージを通過した。
フッドステージ
10人がそれぞれの地元でパフォーマンス。ルーツを辿る審査はこの回の型として定着していく。
RAPSTAR CAMP
24時間以内に新曲を作る1対1のノックアウト対決。Fuji Taito vs Skaaiの一戦は今も「ラップスタア史に残る名勝負」と語り継がれている。
ファイナル
12月25日、川崎 CLUB CITTA'。CAMP勝者4名と敗者復活のCYBER RUIによる決勝は、eydenが「PAPER SHIT」を武器に制した。
記録 — 何が起きたか
この回から審査員が大幅に刷新され、AKLO、YZERR、Awich、IO、T-Pablow、R-指定という現行シーンの最前線が並んだ。シーズン1から4大会続いたKダブシャイン体制からの、完全な世代交代である。放送も毎週土曜22時の全10話に再編され、決勝は12月25日——クリスマスの夜に川崎 CLUB CITTA'で行われた。
ファイナリストはEASTA、Fuji Taito、ShowyRENZO、敗者復活のCYBER RUI、そしてeyden。優勝したのは千葉・袖ケ浦のeydenだった。クルー98jamsを率い、父の車検場で働きながらラップしてきた男は、決勝で「PAPER SHIT」を披露し、審査員からずば抜けた評価を集めたと伝えられる。優勝直後の2022年1月には、番組で生まれた曲を収めたEP『T.B.T.H』を発表した。
- 放送
- 2021年10月16日〜12月25日、毎週土曜22:00にABEMAで放送(全10話)
- Judges
- AKLO、YZERR、Awich、IO、T-Pablow、R-指定
- Finalists
- EASTA、Fuji Taito、ShowyRENZO、CYBER RUI(敗者復活)、eyden
- Staff
- オーガナイザー/MC: RYUZO / ナレーション: 笠松将 / 決勝バックDJ: DJ CHARI
- Prize
- 活動資金300万円
名場面 — この回を語るなら
Fuji Taito vs Skaai——史に残る名勝負
RAPSTAR CAMPの1対1で、Fuji Taitoと九州大学大学院在籍のまま出場したSkaaiがぶつかった。Fuji Taitoが対決のために作った「Crayon」(prod. ZOT on the WAVE)はそのまま配信され、大会楽曲の枠を超えたヒットになった。勝者も敗者も、この一戦で名前を刻んだ。
CYBER RUI、18歳の敗者復活
応募動画がTwitterで拡散され、出演前から話題だった大阪の18歳。予選を最上位で駆け抜けながらCAMPで敗れ、敗者復活で決勝に戻ってきた。フィメールラッパーが「枠」ではなく実力で全国配信の決勝に立つ姿は、以降の応募者の風景を確実に変えた。
クリスマスのCLUB CITTA'
決勝の舞台は12月25日の川崎 CLUB CITTA'。コロナ禍の無観客だった前回から一転、観客の入ったフロアで、DJ CHARIのバックDJとともに5人が争った。
この回から生まれた楽曲
Crayon — Fuji Taito & ZOT on the WAVE
CAMPの名勝負から生まれた一曲。大会楽曲の枠を超えて配信ヒットになった。
PAPER SHIT — eyden
prod. DJ FRIP a.k.a BEATLAB。決勝披露曲。優勝直後のEP『T.B.T.H』(2022年1月)に収録された。
I got the speed — CYBER RUI × ShowyRENZO
ファイナリスト同士の共演として2022年3月にリリース。番組が作った人脈がそのまま楽曲になった。
批評 — シーンに何を残したか
この回の最大の事件は、優勝者ではなく審査員席で起きた。Kダブシャイン、ANARCHY、SEEDAら「シーンを作った世代」から、BAD HOPのYZERR・T-Pablow、YENTOWNのAwich、KANDYTOWNのIO、バトルの頂点R-指定ら「いまチャートにいる世代」への総入れ替え。これは単なる人事ではなく評価軸の交代だ。歴史的正統性ではなく、現在の市場とシーンへの接続力が合格の意味になった。以降の王者たちの「優勝後の駆け上がり」の速さは、この構造転換の直接の産物だと言っていい。
そして2021年を振り返るとき、決勝の5人と同じくらい、そこに残らなかった名前を書かなければならない。3rdステージで「曲に展開がない」と落とされたBonberoは、3年後に初アルバム『For A Reason』でシーンの中心にいた。CAMPで散ったSkaaiは大学院を中退してラップに専念し、POP YOURSの常連になった。そもそも動画審査すら通らなかった応募者の中には、WatsonとYvng Patraがいた。歴代で最も豊かな才能のプールは、この回の「落選者名簿」の中にある——オーディションの審査は未来を予言しない。それはこの番組の失敗ではなく、シーンの豊かさの証明だ。
敗者復活から決勝まで生き残ったCYBER RUIの存在は、優勝と同じくらい大きな遺産を残した。フィメールラッパーが実力で全国配信の決勝に立つ姿は、オーディション番組の社会的な機能——誰がここに立てるのかという想像力の更新——が最も良く働いた例のひとつだ。
優勝したeydenについては、地元と仲間を背負う等身大の言語感覚とともに、刷新された審査員の美学——「いま鳴っている音」への同時代性——が反映された選択でもあった。旧体制なら別の結果だったかもしれないという想像こそが、審査員交代の意味を何より雄弁に語っている。
※「批評」はBARS.編集部の見解です。
その後 — 系譜はつづく
この回に原型ができた「現役最前線による審査」体制は、以降の全大会に引き継がれている。eydenはEP『T.B.T.H』からRed Bull RASEN、POP YOURSへと歩を進め、2026年にはドラマ出演も決まった。ファイナリストのShowyRENZOは幼馴染のShowyVICTORとユニット「Showy」を組み——その相方が、次の2023年大会で王者になる。
なお2022年に大会は開催されていない。2021年大会が年末に終わり、次回が2023年1月開幕の年明けサイクルに移ったためで、番組は休止ではなく暦をまたいで続いていた。
RAPSTAR 2021 王者
eyden
アーティストページで全曲を見る →
出場者名鑑 — あの回に出てた人は、いま
EASTA
2位
SUMMER SNOWMAN(EASTA & KVGGLV)としても知られる実力者。大会後はNAOtheLAIZAとの共作などで活動を続ける。
Fuji Taito
3位
群馬・大泉町、ブラジルにルーツを持つ。名勝負から生まれた「Crayon」が代表曲になり、クルーでの共同生活から制作を続ける。
ShowyRENZO
ファイナリスト
茨城出身。幼馴染ShowyVICTORと「Showy」を結成。2024年のEP『HELL IN 東京』収録「SVMMER」がバイラルヒットした。
BARS.でカタログを掘る →
CYBER RUI
ファイナリスト(敗者復活)
2023年にアルバム『ISSUES DELUXE』。2025年からはABEMAドラマ『警視庁麻薬取締課 MOGURA』に出演し、表現の幅を広げている。
Bonbero
3rdステージ敗退
「曲に展開がない」と落とされた男は、2024年の初アルバム『For A Reason』(Skaai、Benjazzy参加)でシーンの中心へ。落選者の逆襲の代表例だ。
BARS.でカタログを掘る →
Skaai
RAPSTAR CAMP敗退
九州大学大学院在籍のまま出場し、番組を転機に中退してラップに専念。POP YOURS連続出演など、敗者側から最も遠くまで行った一人。
Watson
動画審査落選
動画審査すら通らなかった男は『Soul Quake』シリーズで大ブレイクし、2026年にワーナーとメジャー契約。STARZ 2025にはゲストライブ側で凱旋した。
BARS.でカタログを掘る →
Yvng Patra
動画審査落選
落選後に全国区へ駆け上がり、POP YOURSに連続出演。2025年王者Pxrge Trxxxperのアルバムにも客演している。