RAPSTAR ARCHIVE — SEASON 6
ラップスタア誕生
2023
番組史上初、敗者復活からの逆転優勝。オーディションが「ドラマ」として完成した回。
王者
ShowyVICTOR
Rep
茨城
応募
3,457人(当時過去最多)
決勝
2023年5月26日
会場
東京・Club eX
結果
敗者復活からの優勝
一度落ちた男が、王になる。
大会の流れ — 応募から決勝まで
応募
応募総数3,457人は当時の番組史上最多。前回2021年の2,546人からさらに増えた。
AREA TRIAL(新設)
この回から地方予選「AREA TRIAL」を導入。渋谷はSEEDA・Leon Fanourakis・DJ CHARI、横浜はZOT on the WAVE・KOWICHI・YZERR、大阪はDJ RYOW・Jin Dogg・JAGGLAが審査した。動画の外——目の前の観客の前でのマイクさばきが試される。
SELECTION CYPHER
30名によるブロック別のサイファー審査。視聴者投票と審査員評価の両方でふるいにかけた。ラップ歴3ヶ月のKaneeeが視聴者投票2位まで駆け上がったのもこのステージだ。
HOOD STAGE / RAPSTAR CAMP
地元密着審査を経て、24時間以内に新曲を作る1対1の楽曲バトル「RAPSTAR CAMP」へ。勝者4名と敗者復活のShowyVICTORがFINALSに進んだ。
FINALS
5月26日、東京・Club eX。パフォーマンス部門と楽曲部門の2軸採点で争われ、ShowyVICTORが両部門1位の115ポイントで圧勝した。
記録 — 何が起きたか
応募総数は当時過去最多の3,457人。この回から地方予選「AREA TRIAL」が導入され、選考は動画審査→AREA TRIAL→SELECTION CYPHER→HOOD STAGE→RAPSTAR CAMP→FINALSの6段階になった。RAPSTAR CAMPを勝ち抜いたAMO(高知)、Kay-on a.k.a. Kwi 4 Kang(大阪)、7(和歌山)、Spada(東京)の4名に、敗者復活枠から勝ち上がったShowyVICTOR(茨城)を加えた5名で、5月26日に東京・Club eXにて決勝が行われた。
決勝はパフォーマンス部門と楽曲部門の2軸採点。ShowyVICTORは「LAST SAMURAI」「GENZAI」「REVENGE」を披露し、両部門1位の合計115ポイント(2位Kay-onは47ポイント)で番組史上初の敗者復活王者になった。すでにSEEDAやAwichとのコラボ実績を持つシーン内の実力者が、CAMPで一度敗れてから頂点まで登り返す——賞金300万円に加え、優勝特典として2日後の「POP YOURS 2023」出演権を手にした。
- 放送
- 2023年1月14日〜、ABEMA HIPHOPチャンネルで放送
- Judges
- AKLO、Awich、R-指定、ralph、SEEDA、WILYWNKA(決勝時。開幕時はYZERR、¥ellow Bucksを含む7名で発表され、ralphは途中から参加)
- Finalists
- AMO、Kay-on a.k.a. Kwi 4 Kang、7、Spada、ShowyVICTOR(敗者復活)
- Prize
- 300万円+「POP YOURS 2023」出演権
名場面 — この回を語るなら
審査員が立ち上がったSpadaのスピット
前年の夏に親友Gucci Princeを亡くしたSpadaは、その思いを乗せたパフォーマンスで審査員を立ち上がらせた。勝敗とは別の位相で、この夜のClub eXに最も重い静けさを作った瞬間だった。
「ヒップホップは持たざる者の武器」
Kay-onは在日韓国人3世として受けてきた差別の経験に触れ、ヒップホップは持たざる者の武器だと語った。7は母をがんで亡くした直後の出場で、アジア人蔑視への対抗をユーモア混じりのリリックに変えた。決勝の5人全員が、勝つためだけでなく、何かを背負ってマイクを握っていた。
「100万は母ちゃんに」
優勝したShowyVICTORは、賞金300万円のうち100万円を母に贈ると表明した。そして「ここにいる5人、俺らがここから時代を作るぜ」。優勝スピーチが自分ひとりの勝利宣言ではなかったことは、この回の性格をよく表している。
Kaneee、視聴者投票2位で落選
SELECTION CYPHERで、ラップ歴3ヶ月のKaneeeが視聴者投票2位まで上がりながら審査員票で落選した。だがこの「落選」こそが彼のキャリアの起点になる——1年後、彼はPOP YOURSの看板級に育っていた。
この回から生まれた楽曲
GENZAI — ShowyVICTOR
RAPSTAR CAMP発の楽曲。番組を飛び出してSoundCloudのチャートを席巻した。
LAST SAMURAI — ShowyVICTOR
prod. Riribeatz。決勝披露曲が2023年6月に配信リリースされた。
批評 — シーンに何を残したか
オーディション番組は「完璧な勝者」より「一度死んだ者の帰還」を愛する——この普遍法則を、日本語ラップの文脈で初めて完全に実演したのがこの回だ。ShowyVICTORの優勝は、勝敗の記録である以上に物語の達成であり、以降この番組の感情的な核が「誰が上手いか」から「誰の物語に賭けるか」へ移動した。2年後にPxrge Trxxxperが同じ道を辿ることを思えば、ここが分水嶺だった。
審査員席はもっと批評されていい。WILYWNKA(シーズン1の2位)とralph(2020王者)が審査する側に回った——「出場者が審査員として帰ってくる」循環がこの回で完成した。権威を外部(レジェンド)から調達していた番組が、自分の歴史から権威を再生産できるようになった。これは番組がシーンのインフラになったことの決定的な証拠だ。
AREA TRIALの導入も見逃せない。応募3,457人時代の動画審査は、どうしても「画面の中で光る者」に最適化される。地方予選という物理的な現場を挟むことは、配信映えとは別の軸——目の前の空気を掴む力——を拾い直す補正装置であり、番組が自らの選考バイアスに自覚的であることを示した。
そしてこの回は「落選の価値」を証明した回でもある。視聴者投票2位で落ちたKaneeeは、翌年には落選者としては史上最速級の駆け上がりを見せ、メディアに「王冠が無い王」とまで書かれた。優勝者の物語と落選者の物語が同時に最高値を更新した2023年は、この番組が「勝者を選ぶ装置」ではなく「才能を発見する装置」であることを、結果で示してしまった。
※「批評」はBARS.編集部の見解です。
その後 — 系譜はつづく
敗者復活は以降この番組の物語エンジンとして定着し、翌2024年には敗者復活のCharluが準優勝、2025年には2人目の敗者復活王者Pxrge Trxxxperが誕生する。ShowyVICTORの故郷・茨城は、その2人目の王者の故郷でもある。
ShowyVICTORは優勝2日後にPOP YOURSのステージに立ち、幼馴染で前回ファイナリストのShowyRENZOとのユニット「Showy」としても動き出した。2021年のファイナリストの相方が2023年の王者になる——茨城の幼馴染2人が2大会をまたいで繋がっている。
RAPSTAR 2023 王者
ShowyVICTOR
アーティストページで全曲を見る →
出場者名鑑 — あの回に出てた人は、いま
Kay-on a.k.a. Kwi 4 Kang
2位
大阪出身。在日韓国人3世としての経験を武器に変えるスタイルで、決勝2位の47ポイントを獲得した。
Spada
3位
東京出身。亡き親友への思いを乗せた決勝のスピットは、この回を見た者の記憶に最も長く残っているパフォーマンスのひとつだ。
7
ファイナリスト
和歌山出身。大会後はKEIJUやSTUTSらとの共演を重ね、独自の言語感覚で評価を上げ続けている。
BARS.でカタログを掘る →
AMO
ファイナリスト
高知出身。大会直後の2023年8月に1stミニアルバム『F4MILY』を発表。母子家庭で育った背景を「家族」のテーマに昇華した。
Kaneee
SELECTION CYPHER敗退
視聴者投票2位で落選した男は、その後STUTSとの「Canvas」などで一気にブレイク。POP YOURSの常連になり、「王冠が無い王」と評された。